BLOG

アニマルライツ、アニマルウェルフェアをご存知ですか?

アニマルライツとは、一言で言えば「動物が動物らしく生きる権利」の事です。

対象は全ての動物に及びます。

 

アニマルウェルフェアとは直訳すると「動物福祉」となります。

これでは意味が分かりづらいのでさらに細かく説明します。

動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態の事になります。

より具体的に役すると、動物を管理・飼育する上で、その動物本来の生き方を尊重する考え方になります。

 

 

より簡単に区分けしましょう。

アニマルライツ 全ての動物は人間と同じ生き物だから、人間が利用する事はできない、してはいけない。

アニマルウェルフェア 食べるために殺すにしても、動物本来の生き方を無視した飼育方法や屠殺方法を取ってはならない。

 

アニマルライツの考え方は実現は難しいかもしれませんが、シンプルで分かりやすいので、最初にアニマルウェルフェアについて解説して行きます。

 

アニマルウェルフェア・・・

アニマルウェルフェアには「5つの自由」という考え方があります。

と言う、人間なら当たり前の行動を動物にも当たり前にさせてあげる事です。

①立つ

②寝る

③向きを変える

④身繕いをする

⑤手足を伸ばす


では畜産業界ではどうなっているのでしょうか?


牛について・・・

牛は「肉用牛」と「乳用牛」に分けられます。読んで字の如しです。

しかし1950年頃まで「肉用牛」と言うものは存在しませんでした。

 

それは牛が人間に変わる労働の役目を背負った「役肉用牛」だったからです。その役目が果たせなくなった時、屠殺して肉となったのです。

働かせるだけ働かせて、役に立たなくなったら殺して食べてしまう、そう聞くと恐ろしくなりますよね。

しかし、役肉用牛として働いてもらうのだから、それなりに飼育にも健康を気遣い、役に立たなくなるまでは長い年月があり、家族のように暮らす事ができたと言うことも理解する必要があります。

 

つまり、今の工場畜産による食用肉として生まれた牛は、雄であれば多くは生まれてすぐに屠殺され(母乳は子牛のものではなく人間のため)、生きているものはツノを切られ(ケンカで怪我を防ぐため)ます。

乳もでない肉も硬くなる雄は必要ないのです。つまり生き物ではなく、乳を出し肉として殺されて解体されるだけの道具なのです。


モッツァレラチーズを作るために犠牲になった水牛の雄の子供達

年間約5万頭が生きたまま口と足を縛られ殺されます。


肉用牛の推移

1950年頃 肉用牛(役肉用牛) 225万2千頭

2016年 247万9千頭

ピーク1994年 297万一先頭

 

意外に頭数が増えていないように見えますよね

では分析してみましょう。

1965年 月齢20ヶ月で出荷 体重450kg

2015年 月齢29ヶ月で出荷 体重760kg

 

つまり出荷頭数は1割増ですが、出荷量は4割増えているのです。

 

ハイジの世界のように放牧されている肉用牛は9万2千頭、つまり僅か3.7%でその他は舎飼いなのです。

動かないから餌も最低限ですみ、肉も硬くならず、肥満に適した脂がつくと言うことです。

 

スイスやデンマークでは繋ぎ飼いは禁止されており、英国でも僅か0.3%でしかありません。

日本はどうしたのでしょうか?


適切な牛舎の見本の様に清潔な牛舎


乳用牛の推移

1950年頃 19万8千頭

2016年 134万5千頭

ピーク時 1985年 211万1千頭

 

これは頭数であって、では生乳生産量はどうなっているのでしょうか?


乳用牛の場合、なんと60センチの長さしかないロープに繋がれる「繋ぎ飼い」が主流で、糞尿は垂れ流し(動けない事で下のレーンに糞尿が落ちる様になっている)、その状態だから乳を絞る搾乳機を取り付けるのも簡単です。

 

1959年 経産牛1頭の生乳生産量 4023kg

2015年    同        8088kg

 

つまり少ない頭数でも生乳生産量は一頭当たり倍に増やすことができる様になったのです。

それが、1990年後半頃から導入され始めた「搾乳ロボット」によるものです。

ロータリー型搾乳ロボット

しかしいくら効率が良いロボットを導入したところで、元々の乳が生産されない限り搾乳はできませんよね。つまり母牛に乳が出るように強制しているのです!

それは餌にある薬が入っているのかもしれません、乳が出るためには妊娠していなければなりません、強制的に受胎を繰り返し、その子供を奪い取り、そしてまた強制的受胎を繰り返しているのかもしれません。

 

 

豚について・・・

豚の飼育数の推移

1950年 60万8千頭

2016年 931万3千頭

ピーク時 1989年 1186万6千頭

 

豚飼育農家数

1950年 45万9千戸

2016年 5千戸

ピーク時 1962年 102万5千戸

 

1戸当たりの飼育数

1950年 1.3頭

2016年 1928.2頭

 

1,483倍に膨れ上がっているのがわかります。

つまり、工場畜産がどんどん増えて行ったことで、飼育農家が減って行っても頭数が増えた、つまりは機械によって管理されている豚が多くなったと言うことになります。

 

豚も牛と同じく、生きたまま睾丸を摘出されます。

酷いのは妊娠ストールと言われている檻の中に閉じ込められた雌豚に、強制的に妊娠を繰り返させることです。

ストールの大きさ 幅約60〜70cm 長さ2m

身動きできないストールの中で子供を産み、しかし可愛い我が子を見ることも舐めることもできない中で、授乳だけをさせられるのです。

可愛い我が子を見ることも舐めることもできない。

自分の体に集ってくるハエも追い払えない。

繁殖用の雌豚は生後8ヶ月ほどで妊娠させられます。妊娠期間は114日で分娩予定の7〜10日前にストールの中に入れられます。

そして3週間ほど授乳だけをさせられ我が子を奪われます。なんとその5日前後でまたもや強制妊娠させられるのです。

 

養豚農家に「いつ豚は自由になるのか?」とアンケートを行ったところ、61%の農家で「ない」と答えました。あると答えた農家のうち71%が先の子供を取り上げ授乳するまでの僅か5日程度と答えています。

 

これをなんと6回も繰り返され、約3年8ヶ月の命を閉ざす日がやってきます。

そう、屠殺場で首を斬られ肉を削がれるその日が。

人間が、安くて柔らかい肉を求める結果、この様な悪魔の所業をさせてしまっているのです。

 

 

鶏について・・・

先ず、工場畜産が始まったのは鶏からと言うことです。

 

鶏の飼育数推移

1950年 1654万5千羽

1963年 9844万7千羽 ここまでは肉用鶏と産卵鶏に分かれていない数字

当時は、産卵鶏が中心でその副産物が鶏肉だったのです。

1960年頃から鶏肉専用として飼育される様になって、統計が別々にあがる様になりました。

 

採卵鶏推移

1964年 1億773万8千羽

2016年 1億757万3千羽

 

肉用鶏推移

1964年 1317万4千羽

2016年 1億3439万5千羽 過去最高

 

飼育戸数推移

1950年 375万4千戸 1戸当たり4.4羽

1963年 372万3千戸   同  26.4羽

 

 

産卵鶏について・・・

1950年頃に「バタリー」と言う、平飼いと違う木で囲まれた檻が作られ、縦に積み重ねる事ができるので、土地有効活用面積の効率が上がりました。しかし木製であったため衛生的に不向きで、5年もすると金属製の「ケージ」に変わりました。と言っても木製が金属製に変わっただけで、本来地面や木の枝に止まるために生まれた足の爪は、大きく曲がり変形して行きました。

ではバタリケージはどのくらいの大きさというと、やや大きさには農家によって違いますが、平均的な大きさでは約400平方センチメートルであり、これは20センチ×20センチしかありません。この中で卵が産めなくなるまで閉じ込められているのです。

因みにこの卵が産めなくなった鶏を「廃鶏」と呼び、脂分が少なく身が硬いところを逆に利用して「地鶏」もしくは「銘柄鶏」、ただこの二つの商標は違法になるので、「親鳥」として売られているお店が多くあります。


何段にも重ねられたケージでは、上から落ちてくる糞を背中に、山の様に溜まってしまっている鶏もいると言う。


雄のひよこはどうなる?・・・

もう一つ付け加えなければならない情報をお伝えします。

産卵鶏の卵は産卵場で孵化されます。当然約半分は雄です。その雄達はどうなるのでしょうか?

昔は駅前で色の塗られたひよことして売られていましたが、その全てが雄とわかって、今では誰も買うことはないでしょう。つまり需要がないのです。

 

ですから雄のひよこは殻を破り日の目を見た瞬間、この世から抹消されます。

色々な処分の仕方がありますが、円錐バチの中に放り込まれた雄は、その先には鋭利な歯のカッターが回っており、一瞬で命を落とします。

そして「産業廃棄物」として処理されるのです。


オスとメスの区別をするのは1秒足らず。

オスの行き先は目の前の円錐の中心。

その下では鋭いカッターが回っています。


肉用鶏について・・・

肉用鶏は「ブロイラー」と呼ばれています。

品種改良のおかげ?で、通常の鶏は成鳥になるまで4〜5ヶ月かかりるのに対して、たったの7〜8週間で成鳥と同じ大きさに育ちます。

 

肉用鶏は一応平飼いで育てられます。太陽の当たらない薄暗い倉庫の中で、身動きできない状態で育ちますから、赤いはずの鶏冠は薄いピンク色になり、太陽に当たって育った鶏は茶色化した羽毛になるのに病的な白さのままです。

 

計算してみると一坪の土地の中に2.933kgの鶏が53.6羽一緒にいる事がわかります。

一羽のいられる場所の大きさはA4用紙とほぼ一緒の面積しかありません。

激混みの通勤列車でもこれほど酷くはない。

生きている間、ずっとこの状態が続く。

肉用鶏は1965年当時1.23kgだったのです。

つまり50年間で2.4倍の大きな鶏になったと言う事です。安くて脂の乗った鶏を食べたい人にとっては、なんて素晴らしい事なのでしょうか。

 

どうでしょうか?

文頭のアニマルウェルフェアの「5つの自由」を思い出してください。

①立つ

②寝る

③向きを変える

④身繕いをする

⑤手足を伸ばす

どれか一つでも当てはまっているでしょうか?

 

これが今の日本の畜産業界、つまり「工場畜産」の現状なのです!

他国では、アニマルウェルフェアについて大変厳しく臨んでいます。

モラルの高いと言われている日本で、なぜこの様な残酷な飼育方法が採られているのでしょうか?

全てが利益を優先するためです。そしてそれを取り上げることのないマスコミと、真実から目を背ける消費者がいるからに他ありません。

 

参照文献
チロ・ツグミ・メリーと 動物問題 ~ ヴィーガン ~

工場式畜産の発展
浅野幸治(豊田工業大学)

関連記事

PAGE TOP